あまり意識して見たことがない方も多いかもしれないが、日本は実は、世界的に見ても岩石の種類が極めて豊富な「石の国」である。
例えば、あの美しい富士山を構成するのは玄武岩。岐阜県長良川の川沿いへ行けば、砂岩や泥岩をはじめ、鮮やかな緑色岩やきらきらと輝く花崗岩など、実にさまざまな種類の石たちが表情豊かに転がっている。
いつもは見慣れた近所の川辺や海岸で、足元にある岩石ひとつひとつに注目しながら歩いてみると、そこには面白い発見が隠れているのだ。
今回は、知れば楽しい、探すともっと楽しい、そんな地球の欠片——「岩石」のお話。
岩石の種類
まず岩石は、材質や特徴によって主に3つに分類できる。
- 変成岩
- 火成岩
- 堆積岩
変成岩

大陸の衝突や激しい火山活動など、地球規模の凄まじい熱や圧力によって、元の姿から劇的な変身を遂げた石たち——それが、「変成岩」である。
つまり彼らは、遥か地下深くでギューギューに押し込まれたり、限界まで引き伸ばされたり、あるいは薄く剥がされたり……。何らかの凄まじい「圧」をかけられ、その過酷な試練を耐え抜いて生まれた、いわば苦労人(苦労石)なのだ。
変成岩の例(上記画像は千枚岩)
・千枚岩
・片麻岩
・ホルンフェルス
・片岩
また、あのお馴染みの上品な「大理石」も、もともとは石灰岩(堆積岩)だったものが見事変身を遂げたものであり、変成岩の仲間である。

例えば、釘で傷がついたり、磨くとピカピカになったり、薄く剥がれやすそうだったりする岩石は変成岩かも?
火成岩

火山が激しく噴火し、ドロドロに流れた溶岩や、地下のマグマそのものが冷え固まって誕生したワイルドな石たち――それが「火成岩」である。
そしてこの火成岩は、マグマが冷やされた「場所とスピード」の差によって、「火山岩」と「深成岩」の2つの派閥にカチッと分けられる。
まず火山岩は、地表近くや地上に飛び出したマグマが、外気に触れて「いや、寒いって!」と言わんばかりに急激に冷やされて固まった岩石のことだ。
別名「噴出岩」とも呼ばれる彼らは、急に固まったせいで、大きさの異なる結晶がランダムに散らばるという、なんとも慌ただしい見た目(斑状組織)が特徴である。
対する「深成岩」は、地下深くの温かいマントル付近で、マグマがまるでお風呂上がりのようにゆっくり、何万年もの時間をかけて固まってできた岩石だ。
時間をかけて丁寧に固まったおかげで、粒のサイズがある程度綺麗に揃った、育ちの良さそうな見た目(等粒状組織)になるのが特徴である。

ゆっくり…ってどれくらい?
例外はあるものの、地下深くでマグマが「深成岩」として固まるまでには、なんと数十万年〜数百万年ほどもの途方もない時間がかかるとか。
地球の根気強さには、ただただ脱帽するばかりである。
火山岩の例としては、以下のとおり。
【火山岩】(急造チーム:大小さまざまなサイズの結晶とガラスなどの物質からできている)
・流紋岩
・玄武岩
・安山岩
【深成岩】(じっくり育成チーム:火山岩と比べて粒子が大きく、割れた面を触ると心地良いザラザラとした感触がある)
・花崗岩
・斑れい岩
堆積岩

最後の3つ目が、川から運ばれてきた泥や砂、はるか昔の生き物の死骸などが、数万年以上の時間をかけて海や湖の底に降り積もり、ギュッと押し固められてできた「堆積岩」である。
「時の積み重ね」をそのまま形にしたような石で、表面がザラザラ・ボコボコしていたり、バームクーヘンのように綺麗な層状の模様(層理)になっていたりするのが特徴だ。
堆積岩の例(上記画像は礫岩)
・礫岩
・砂岩
・泥岩
チャート
・石灰岩
ちなみにおしゃれな雑貨屋でよく見かける、珪藻土マット。
お風呂上がりの水分をまたたく間に吸い取ってくれるあの超便利グッズも、実はこの堆積岩を元に作られた商品なのだ。
つまり私たちは毎日、何百万年もの地球の歴史とプランクトンの遺骸の結晶を踏みつけながら、呑気に感動しているわけである。
ありがとう!堆積岩!
【オススメ度★★★】筆者厳選の岩石スポット
最後に、もしこの記事を読んで「ちょっと足元の石が気になってきたな」という奇特な(失礼、好奇心旺盛な)あなたのために、人生で一度は足を運んでおきたいおすすめの岩石スポットを紹介しよう。
どの場所も、岩石ウォッチングには絶対に外せない聖地ばかりである。
玄武洞

まず外せないのが、兵庫県豊岡市が世界に誇る圧倒的なパワースポット、「玄武洞(げんぶどう)」である(※よく城崎市と勘違いされがちだが、温泉のすぐ近くの豊岡市にある)。
ここは約160万年前の凄まじい噴火によって流れ出したマグマが、とてつもなく長い時間をかけて冷え固まってできた、天然の玄武岩の巨大な採石場跡だ。

五〜六角形の石柱が無数に積み重なって織りなす景色は圧巻ですよ!
地球ってすげぇ!!
さらにここ、ただ見た目が凄いだけではない!
1931年に日本の地質学者がここの石を調べたところ、磁気の向きが現在の南北と「真逆」であることを発見。世界に先駆けて「地磁気の逆転」という地球の秘密を暴く舞台となったのだ。
そんな玄武洞だが、一歩街へ繰り出せば地元では昔から身近な存在。街中を歩いてみると、家の石垣やら漬物石やら生活に密着している玄武岩に遭遇することもできる。
さまざまな顔を持つ玄武岩に思いを馳せながら、帰りは城崎温泉へ――これ以上ない、完璧な大人の休日コースである。
東尋坊

「東尋坊」といえば、サスペンスドラマのクライマックスや自殺の名所、という少々おどろおどろしいイメージを持つ方も多いかもしれない。
だが、あの荒々しく剥き出しになった絶壁こそ、実は極上の岩石ウォッチングが楽しめる世界レベルの聖地なのだ。
ここは約1200万年前の噴火によって生じた「輝石安山岩(きせきあんざんがん)」という火山岩でできている。見どころは、海岸線にズラーっと連なる「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」の巨大な岸壁だ。
柱状節理とは、地上に噴き出たマグマが「冷え冷えの外気」に触れ、タテにピキピキと亀裂を入れながら急速に固まってできた五角形や六角形の岩の柱のこと。
これほどまでに大規模な柱状節理を生で拝めるのは、なんと世界でもたったの3ヶ所だけという、超ウルトラ級のレアスポットなのである。
・朝鮮半島の金剛山
・スカンジナビア半島の西海岸
・日本の東尋坊

そのうちの1つが、ここ東尋坊なんです!
ぜひ遊覧船に乗って「海上から」しか見れない絶景を楽しんでほしい!
地球が創り出す圧倒的な景色に、ただただひれ伏したくなること請け合いである。
長瀞(ながとろ)渓谷

埼玉県の「長瀞(ながとろ)渓谷」といえばスリル満点の川下りが有名だが、地質学者たちからは「地球の窓」と呼ばれるほど、世界的にも極めて貴重な岩石が剥き出しになっている聖地である。
なかでも絶対に見ておきたいのが、妖艶なピンク色に輝く「紅簾石片岩(こうれんせきへんがん)」だ。
この美しいピンク色の正体は、大昔にこの岩が海底にあった頃、じわじわと蓄積された「マンガン」に由来する。
国内で拝めること自体が珍しいのだが、長瀞にあるほどの超巨大サイズともなると、世界的にも激レア中の激レア!
現地へ行く際はぜひルーペを持参し、その可憐で細かい結晶体をじっくりと変態的に覗き込んでみてほしい。
さらにその近くには、自然が生んだ奇跡の穴「ポットホール(甌穴)」も鎮座している。
これは、川のくぼみに入り込んだ硬い石ころが、激しい水流によって「天然の洗濯機」のように数百年以上もぐるぐると回転し続け、自らの体で周囲の岩盤を丸く削り落とした執念の穴だ。
そう思うと、ただの岩の穴が急に愛おしく見えてくる……。

長瀞岩畳は国の名勝および天然記念物に指定されています。古代の岩畳が織りなす風景は本当に神秘的!
川下りの水しぶきを浴びるのもいいが、地球が作り出した壮大かつ貴重な奇跡を拝むために、ぜひルーペをポケットに忍ばせて足を運んでみてほしい。
まとめ
私たちが普段、何気なく踏みつけて通り過ぎている足元の石ころたち。
それらはすべて、大陸の衝突に巻き込まれたものであったり、地下深くで何百万年も温められたものであったりと、さまざまな歴史的背景とともに寡黙にそこに存在しているのだ。
思い立ったが吉日。
たまには立ち止まり、足元の小さな岩石から、地球の壮大なドラマを覗き込んでみてはいかがだろうか。
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