カーナビは迷わない。
右デス。
左デス。
300メートル先、目的地デス。
どんなに途中でこちらが間違えても、こいつは怒ることなく、呆れることなく、淡々と仕事をまっとうする。
「この道よりあっちの道のが近いんちゃう?」
そんな運転手の気まぐれにも付き合い、目的地までの道を探し直してくれる。
まるで現代の八咫烏だ。
人生にも、こんな案内役がいればいいのに。
右に曲がろうとしたら、「この先は茨の道が続きます」と教えてくれる。
左に進めば幸せが待っていると、先回りして知らせてくれる。
そんなナビがあれば、人生の迷いも後悔もずいぶん減るだろう。
けれど、道を間違えた先で、思いがけず面白いものに出くわすこともある。
そもそも、自分がどこに向かいたいのかさえ、わからないこともあるのだ。ナビに入力しようがない。
それなのに、ナビの方から「人生ノ目的ヲ、イレテクダサイ」なんて催促されたら、それこそ困る。
間違った選択肢を取るたび、「ルートヲ、再検索シマス」「案内ルートヲ、大幅に外レテイマス」と延々繰り返された日には、ナビのご機嫌を伺いながら生きていくほかない。
想像するだけで、げっそりする。
「いちいち、うるさいねん!」と朝から激戦が始まるかもしれない。
私は方向音痴だ。
しかし、間違って曲がっても、ぐるぐる回っているうちに元の場所に戻ってくることもある。
それでも迷ったら、誰かに聞けばいい。
もしかしたら、ナビの知らないような裏道を知っている人がいるかもしれない。
そんなことを考えていると、カーナビが言った。
「目的地周辺デス。案内を終了シマス。」
……こいつも最後の詰めは甘いんだよな。

