久しぶりにガザミを食べた。
近くの魚屋で見つけたガザミ。
昔から蟹が好きなのだが、その中でもガザミが一番好きである。
濃厚な甘味、しっかりとした旨み。
それなのに後味はしつこくない。
なんて素晴らしい蟹なんだろう。
その代わり、手も口の周りもベトベトになる。
でも、そんなことはどうでもいい。
それくらい美味しい。
蒸して良し。
味噌汁に入れて良し。
ラーメンにも合うし、トマトクリームパスタに入れてもめちゃくちゃ合う。
まさに万能蟹である。
そんなことを考えながら食べていると、ふと思った。
……こいつ、こんなに美味しいのに、どうして人間に捕まってしまうのだろう。
強力なハサミを持っている。
しかも泳ぎも上手い。
普通に考えれば、かなり逃げられそうなものである。
気になって調べてみた。
どうやら、ガザミ特有の「挟んだらなかなか離さない」という性質と、「砂に潜る」という防御本能が仇になっているらしい。
海底の砂ごと一網打尽にする漁法から逃げられない。
さらに、カニ網の糸がハサミや脚のトゲに絡みつき、もがけばもがくほど抜け出せなくなるのだとか。
……なるほど。
強力なハサミも、泳ぎの上手さも、砂に潜る能力も、人間の知恵の前では通用しないらしい。
完全に、人間の勝利である。
そんなことを考えながら食べていたら。
……ガザミはもういなかった。


