前髪は大事だ。
わかっちゃいるんだけど、つい自分で切ってしまう。そして失敗する。
今日も、目にかかるくらいの長さに整えるつもりだった。
ほんの少し、ほんの少しだけ切ればいいだけだったのに。
鏡を見ると、前髪は瞼の上あたりにある。
短いって。
……なぜだ。どこで間違った。
目にかからないようにしたかっただけなのに、ずいぶんと思い切りのいい人になってしまった。自分のセンスのなさに笑いが出る。
そもそも、昔の人はどうしていたんだろう。
そういえば鎌倉時代や安土桃山時代の女性って、歴史資料集で見ても、前髪を下ろしている人をあまり見かけない気がする。
なら、こんなにも私たちを悩ませるこの前髪は、いったいいつから一般的になったのだろう。
気になって調べてみると、昔の大人の女性は髪を結い上げるのが一般的だったそう。明治から大正にかけて洋風の髪型が広まり、額に前髪を下ろすスタイルも少しずつ定着していったのだとか。
そう考えると、前髪を切りすぎたくらいで「ああだこうだ」と悩んでいる自分がおかしくなってくる。
切るもよし、伸ばすもよし、分けるもよし。
あるかないか、長いか短いか。
自由にスタイルを選べるだけ良いじゃないか、素晴らしい時代だよ、まったく。
そんなことを考えながら、もう一度鏡を見る。
……うん。
やっぱり、ちょっと短い。
しばらく帽子を被ろうか。

