エレベーターの数十秒

ライフスタイル

エレベーターに知らない人と乗り合わせると、妙に静かになる。

私はあの時間が少し苦手だ。

早く目的の階に着いてくれないかな、と心の中で願っている。

——ふと思った。

他の人は何を考えているんだろう。

今日の晩ご飯のことか。

明日の楽しみなドラマのことか。

あるいは、この後のデートを前に、ちょっと緊張しているのかもしれない。

そう考え始めると、エレベーターの数十秒が妙におかしくなってくる。

誰かが「今日はいい天気ですね」と言ってもいいし、最近見た映画の話をしたっていい。別に禁止されているわけじゃない。

なのに、乗り込んだら

「……ん、静かにしておこうかな」

と、みんなが黙っている。

しーんとしている。

なんだ、この謎の団結力は。

運動会の行進なんて、全員で足並みを揃えるだけでも練習が必要なのに。

こちらは練習なしで、いとも簡単に揃ってしまう。

人間って、集団で何かをするのは大変なのに、集団で何もしないことは簡単なんだな。

そんなことを考えているうちに、目的の階に着いた。

扉が開く。

みんな、それぞれの人生に戻っていく。

アディオス。また会う日まで。

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